012 憎さ故の焦がれるような執着心こそ愛に似て。



 けれど愛とは似て全く非なるもの。


「貴方の携帯電話の番号を知らないのですが」
 真顔で言われた。へ、と間抜けな顔をすると、「だから」と繰り返される。
「貴方の携帯電話の番号を知らないのですが」
「……いや、うん。何の話?」
 思わず尋ねる。とりあえず落ち着こうと思って紅茶に手を伸ばし、口に含んだ。――ら、
ふっと右のポケットが軽くなった気がして、探ってみると携帯電話が無くなっていた。
「え」
 慌てて骸を見ると、やはりそれは骸の手の中にあり。
 病的に白い指先でディーノの携帯を開き、なにやら操作をしていた。
「ああ、そういえば衛星と言っていましたね」
「あのさ、そういう心臓の悪いことをしてくれるなよ」
 というか突然携帯の番号って何だよ? と尋ねようとして、自分の携帯を持っている反
対の手に、骸が違う機種の携帯を持っていることに気付いた。ボンゴレから支給されたも
のでは無いような気がする。
 暫くディーノの携帯と自分の携帯(だと思われる)を交互に睨み合い、キー操作をする
と、骸は「終わりましたよ」とディーノに携帯を投げ返した。潔くディーノは取り落とし、
床の上を携帯が跳ねる。
「あー!」
「相変わらず……」
 呆れるような骸の声に反論しようと顔を上げたが、低いテーブルの下に潜り込んだ携帯
を拾うために身を屈めていたため、後頭部を見事にテーブルの角に打ち付けた。暫く頭を
押さえて唸る。
 骸がもう一度だけ「相変わらず」と繰り返す。
「うるせーよ」
 ひきつり笑いを浮かべながら体を起こし、携帯を見た。幸い、派手な傷がひとつ増えた
ものの、他に目立った外傷はない。
「おいおい手荒にするなって。壊れたらどうしてくれんだ」
「これで故障させられる人間の方が貴重だと思いますが」
 軽やかに笑いながら骸が返す。
 睨み合い。
 馬鹿馬鹿しくなって視線を逸らし、もう一度紅茶に手を伸ばした。
「ていうか」
「はい?」
「何だよ突然ケー番とか」
「ああ」
 骸は自分の携帯を開き、アドレスを確認しながら返す。
「貴方から突然かかってきては心臓に悪いので」
「俺はサイレンか」
「似て非なりますが、まあそんな感じですね」
 また骸が笑った。
 睨み合う。





2007/03/11 携帯購入記念に骸とディーノで。とんでもないデスマッツィとよく言われる
     し自分でも思っていますが、意外と好きです。というか、本当に取り留めねー。
      でも携帯の話は書きたかったんだよ! 自分に起こったことをよくキャラに
     当てはめて書くのが好きです。
      んにしても、甘いのが書きたくないときは骸&ディーノが案外ゆける。山ヒバ
     とか骸ヒバとかはうちの場合攻めが一方的に受けを好きすぎるので、どこかが
     ごにょごにょ甘すぎるのです。お前等告白し過ぎだよ!
      若さって良いね。