※捏造十年後



016 其のままでいいから、 ありのままの形を見せてくれ。



 なあ、あの日と同じだろ?

「子供ですか、あなたは」
 嫌みのようにたっぷりと溜息を吐いてから、骸は紙に包んだガラスの破片をトレイに避
ける。言われている張本人のディーノは先ほどから黙り込んだままで、未だにソファーに
横になり、腕で顔を覆っていた。適当に脱ぎ散らかされたジャケットを拾い、わざとらし
くその埃を叩く。
「部下の方が迷惑していたじゃないですか。大人なら、自分のストレスくらい自分でコン
トロールしなさい」
「わかってる」
 返された声は刺々しい。どこがわかっているんですか、肩をすくめながらジャケットを
ハンガーへ。クローゼットに仕舞った。改めて部屋を見回してみるが、その散らかりよう
は今までに例が無いほど半端では無い。
「大人はそんな返事は返しませんよ」
「じゃあなんて言うんだよ」
「何も返しません」
「卑怯じゃん!」
 それ!
 勢いよく返すも、姿勢は寝ころんだままだ。ディーノは足をばたつかせる。
「だって、だってしょーがねーだろ!! 通信回路イカレるし、外は交戦状態のまんまだ
し、怪我人は増えてくし物資は確実に減ってくし」
 だんだん言葉が震えていく。最後は殆ど叫んでいた。

「内部から情報流れてるって判明したし!!」

 その叫びに、骸は手を止める。拾い上げた本を片手に、じっとディーノを見た。
 顔の上半分は隠されているが、噛み締める顎が震えている。先日の傷がまだ治っていな
いのか、服の袖から覗く包帯も生々しい。子供が癇癪を起こす寸前のように足にも手にも
力が入っていた。
「俺は、俺はあり得ないって言いたいけど」
 信じたいけど。
 寝返りを打ち、ディーノが骸に背中を向ける。
 この人間はいつもそうだ、思う。
(信じる暁に自分が裏切られるというならば、実力のみを信用すればいいものを)
 何故ここまで不器用なのだ、この男は。
(信じられない)



08/01/02 なんか続きを書こうとしてたっぽいけど、日数置いたら何書きたいのか分かん
    なくなったのでもうこれで放置。
     骸は全体的に誰にでも憑依出来る感じで。ぽこぽこディーノの前に姿現すよ。
    ぶっちゃけ本誌で十年後骸様出る前に書いたから色々適当に食い違ってるんだ。
     骸ディノ骸は、ディーノが大きな子供。骸があしらうのが上手な大人。でもほ
    っといたら癇癪起こすのでたまに様子を見に来る骸ママ。
     キャバッローネはみんな家族のように仲が良いから、きっと裏切られたらディ
    野は堪らないはず。骸は元々信頼できる人間が三人しかいない上にその三人が自
    分を裏切れるわけがないという確信があるからディ野が何でここまで病んでるの
    か理解できない。
     大人と子供というか、精神の温度差。