Happy Birthday Takeshi Yamamoto!



「祝って!!」
 笑顔で山本は雲雀に両手の平を見せた。顔はそのあたりに居る小学生よりもよっぽど幼
く、目を細めていつもよりもよっぽど嬉しそうに笑っている。
 ぐしゃぐしゃと頭を撫で回してやろうかと逡巡し早急に理性を持って押しとどめながら、
極めて冷静に雲雀は紙袋を山本に投げて寄越した。笑顔だった山本は雲雀の反応にきょと
んとし、思わず雲雀が「何」とつっけんどんに問う。
「いや、まさか、覚えてた?」
「君は僕に喧嘩売ってるの」
 相手になるよ。トンファーを構えた雲雀に、「今日はパース!」と山本がまた子供のよ
うに笑う。それになんだか毒気を抜かれて、雲雀は事務用の椅子に座り直した。
 がさがさと山本が袋を開き、中身を見る気配。返ってくる反応が楽しみのような恐ろし
いような、複雑な気持ちが絡み合って、とりあえず雲雀は書類を睨み付けていた。視界に
山本が入らないようにして、いつものように資料に目を通していると見せかける。やがて
山本が「あれ?」と声を漏らした。
「雲雀、これってもしかして」
「何」
「雲雀も持ってる奴だよな」
「まあね」
「これ、原則手縫いなんだろ?」
「それが」
 しばらく、意味のない沈黙。耐えきれなくなって、雲雀はそっと顔を上げた。山本が自
らの手の中にある物をじっと見つめ、そして、何も言わない。
 穴が開くほどそれを見つめている山本に、だんだん雲雀は自分の中に久しい感情がこみ
上げてくるのを感じた。焦れるように山本に言う。
「ちょっと、そんなにじろじろ見なくたって、減ったりする物じゃないだろ。眺めるなら
後でやってくれる?」
「え、なんで?」
「仕事の邪魔なんだよ。早く帰って」
「えー」
 山本の声が適当なのも、すべて山本の手中にある物のせいだ。額を押さえる振りをして、
顔を隠す。今の自分がどんな表情をしているのか、想像に難しくない。
「良いから、帰れってば……!」
「はいはい」
 今度は声が微笑みを含んだ物になった。途端、一瞬で雲雀の顔に熱が広がる。赤みが差
した顔で机を叩き付け、「そんなにじろじろ眺めないでよ!」と叫ぶ。

「まつり縫い上手くいかなかったんだから!!」

 声を荒くした雲雀に、今度こそ山本は雲雀を見て、そして目を丸くしていた。しまった、
と雲雀が口を押さえたときにはもう遅く、空気が抜けたように椅子にもたれ掛かる雲雀を
見つめ尽くすと、また山本はそれを見る。
「そんなこと無いってー。めちゃくちゃキレイだぜ。俺、絶対こんなの作れない」
「……嘘」
「嘘じゃないって! 何で嘘!?」
 ほんと、サンキューな雲雀。山本の心底嬉しそうな笑い声。
 雲雀から貰った風紀委員の証であるそれを腕に当ててみながら、山本は鼻歌を漏らした。





2007/04/24 ハッピーバースデイ山本!
      というわけで風紀の腕章を山本にあげた雲雀です。きっとあれですよ、つい
     でに名前も刺繍してありますよ。
      思ったより甘くなっちゃったよ。おかしいな。