048 僕たちは、青臭さを踏み台にして背伸びする世代。 格好も付けられないけどな。 雲雀はひたすら恥を掻くのを嫌う。ちょっとしたミスでも気付くとすぐに眉根を寄せる し、さらに他人に八つ当たりをする。それで揉み消そうとしているらしいとようやく彼の 暴力の半分の理由に気付いたが(もう半分は習慣だ。間違いない)、それに気付いて更に 彼が愛しくなった。 「ねえ、雲雀君」 「何」 応接室に当たり前のように存在している自分の存在を、雲雀はそろそろ気にしなくなっ た。重要文書に触れたときなどは「勝手に触らないでくれる」などと忠告を与えてくるが、 その他は大抵のことをしても視界の端でちらと確認するだけである。つまらない、と思い は頭の隅に片付けて、資料棚を整理している彼に声をかける。 「愛、に、しい、って書いて、なんて読むと思います?」 「何?」 怪訝そうな顔で、雲雀は自分を見た。だから、と自分は笑いながら空中に字を書いてみ せる。 「『愛』『しい』ですよ」 「いとしい、でしょ」 馬鹿にされてるの? 最後にそう付け加えて、また資料棚と向かい合う。ああなんて愛しい、きみの横顔。 「いと、惜しい」 演劇のようにわざとらしく言った自分を雲雀は睨み付ける。ファイルを棚に押し込めて、 仕込みトンファーを袖の中に隠したまま、軽く鳴らして見せた。 「惜しいって、何が」 「おや、何のことですか? 僕は答えを言っただけですよ」 「何なの、きみ。僕の邪魔がしたいの?」 答えなんて、そんなの僕が言ったじゃないか。冷ややかな(それでも自分に言わせれば 随分幼い)眼差しを投げてくる雲雀に、微笑みを返す。 「いとしい、と。あとひとつあるんです」 「あとひとつ?」 一瞬だけ、雲雀の怒気が薄れたのを感じた。 「いとおしい」 唇を動かす。雲雀が目を見張って、ついで不敵に笑った。 「惜しい」 「何がです?」 「それ、漢字で書いてみなよ」 はて、僕は何かおかしなことを言いましたかね。胸中で首を傾げた。 いとおしい。机に綴る。 「……おや?」 字にしてみて、気付いた。 雲雀はひたすら恥を掻くのを嫌う。ちょっとしたミスでも気付くとすぐに眉根を寄せる し、さらに他人に八つ当たりをする。それで揉み消そうとしているらしいとようやく彼の 暴力の半分の理由に気付いたが(もう半分は習慣だ。間違いない)、それに気付いて更に 彼が愛しくなった。 その代わり、雲雀は他人の失敗を執拗に弄ぶ。 「もしかして、ひらがなの『お』が入るのでしょうか」 「うん。『愛』と『しい』の間にね」 「あれ」 「人に問題を出す前に、確認もしてみるべきだったんじゃない」 「惜しいですね」 「他人に出題したくせに」 「海外が長かったですから」 「自分で出題したくせに」 「これはこれは、いと、惜しい」 雲雀が不敵に笑って見せた。珍しく自分も苦笑いをこぼす。 愛おしい。 2007/02/28 これのどこが青臭いのでしょうか(タイトルより)(自分が一番聞きたい/と いうか自分に聞け)。 おかしいな。骸が雲雀で遊ぶ話だったはずなのに。 そして作者もパソコンで変換するまで「いとおしい→愛しい」と本気で思い こんでいたというニアミス。イタリア人より日本語が出来てないてどうだろう 自分。 骸の国籍が気になります。